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MOS
エントリーシートに記載できる資格として経営学部でMOSを導入。
学生の学修意欲の向上が関連科目へも波及し、他学部他学科に横展開へ
社会福祉学の学び舎として、社会事業家 長谷川良信氏によって1965年に創立された淑徳大学。
2012年に新設された経営学部(経営学科/観光経営学科)におけるMOS導入の経緯や効果について、学部長・教授/千葉千枝子さんをはじめ、学生へのMOSスキル支援に携わる全5名の方にお聞きしました。
2012年4月に新設された経営学部(経営学科/観光経営学科)でMOSを取り入れたのは、2013年の夏からです。本学部では、企業経営全般に必要な知識(マネジメント/マーケティング/ファイナンス/データサイエンスの4つの領域の基礎概念)をはじめ、「チームワークとリーダーシップ」「コミュニケーション能力」などの事業や組織運営に大切な社会力や人間力の養成などにも力を注いでいますが、それらの修学結果は目に見えるものではありません。また、他の社会福祉学部や看護栄養学部、教育学部などには卒業後の職業と直結した国家資格がありますが、新設当初の経営学部には修了後に取得できる免状や資格のようなものはありませんでした。そこで、その他学部と同様、大学4年間に学んだ証として就職活動時のエントリーシートに記載できるようなものを検討することに。いろいろ模索するなかMOSのことを知り、本学部を卒業して企業で働くうえで必要とされるスキルが習得できる最適な検定試験だと判断し、取り入れることにしました。
授業では1年次(前期)必須科目に「情報リテラシー」があり、コンピューターリテラシー教育の講義とあわせ、Office製品のアプリケーション(Word/Excel/PowerPoint)の操作法を演習として学びます。また、1年次(後期)必須科目には「データリテラシー」があり、データ読解力や分析力を養うための基礎を学びます。2年次以降の選択科目には「データアナリシスⅠ・Ⅱ」があり、ICTやAIを活用しながら変化するビジネスモデルの分析等も行います。MOSは、これらの授業後のスキルアップと資格取得を目的として取り入れることとし、授業とMOSを位置づけた学習ステップを体系化しました(下図参照)。
流れとしては、前期授業「情報リテラシー」を終えた1年次夏休みにMOS 2019の対策講座(※1)を受講し、約1週間後にWord/PowerPointを受験。次に、後期授業「データリテラシー」を終えた後の春休みに対策講座を受講してExcelを受験。学生は、MOS取得で身につけたスキルを授業やレポート作成等で活かししつつ、複数科目合格後に得られる「MOS Associate」の称号(※2)取得を目標にして取り組みます。2017年度からは上級レベルのExcel(Expert)の対策講座も追加。合格後は「MOS Expert」の称号(※3)取得を目指せますし、選択科目「データアナリシスⅠ・Ⅱ」の解析等には一般レベルより高度なExcelの機能を使うケースがあるため、習得したExcel(Expert)スキルを授業と連携させて活用しています。
※1|対策講座はキャンパス内の教室で4日間(10:00~16:30)実施 ※講習時間は休憩等を除く約22時間)
※2|一般レベル(Excel 2019/Word 2019/PowerPoint 2019/Outlook 2019)の4科目のうち3科目取得で得られる称号
※3|「MOS Associate」+上級レベル(Excel 2019 Expert/Word 2019 Expert/Access Expert 2019のうち2科目取得)で得られる称号
対策講座への参加もMOSの受験も必須ではありませんが、導入時(2013年度)に104名だった参加者が2023年度には2倍を超える226名になるなど、在学中に「資格を取得しておこう」と考える学生は増えています(下のグラフ参照 ※4)。学生へのMOSに関する情報提供は、
・ 大学説明会や入学時の新入生説明会で「社会で求められるPCスキル」として学部長が説明
・ 「情報リテラシー」の授業や、定期的に開催する講座ガイダンスで担当教員が説明
・ 講座や受験方法、ガイダンス動画への案内資料を担当教員が授業で配布
・ 上記の案内資料は、メールや校内システムを使ってキャリア教育・支援センターが全学生に送信
するなど、学部長/キャリア教育・支援センター/教員が三位一体となって実施しています。また、2013年からMOS取得者を1、2年生の演習授業の補助アシスタント(SA学生スタッフ)として起用。目標となる先輩の存在や、一人ひとりの理解度や進捗状況を掌握した寄り添い指導が功を奏し、学修意欲の向上にもつながっています。
※4|2019年~2021年まではコロナ禍の影響により参加者数が減少
学修意欲の向上はMOSの成績にも現われており、導入当初から合格率は90%台でしたが、上級レベルのExcel(Expert)を追加した2017年頃から平均900点台(※5)が出るようになりました。その結果、「MOS世界学生大会2020」(※6)国内大会では上級レベルExcel満点合格の学生が1位入賞。その後2022年から2024年まで毎年国内入賞者を輩出しています。
また、コロナ禍に見舞われた2020年4月、経営学部の教員が一致団結して対策を講じ、その他学部に先駆けてオンライン授業を開始。「情報リテラシー」の授業もオンラインで行ったところ、WordやExcelなどのアプリケーションを操作しながら講義内容を理解していくやり方が学生にフィットして、授業への出席率や習熟度が高まりました。結果、高いときに二桁だった中退率が3%までに劇的ダウン。
こうしたオンライン授業への対応の早さに加え、上記の成果や好状況が認められ、2024年4月からこれまで経営学部で実施してきた「教育のDX化」を、その他の学部学科(7学部13学科)に横展開することになりました。今後は淑徳大学で学ぶ学生のITリテラシーのひとつとして、MOSをキャンパス全体、大学全体へと拡げていきたいと考えています。
※5|MOSの満点は1000点
※6|Office製品のアプリケーション利用スキル世界No.1を競うパソコンコンテスト。国内入賞者(上位20名)はMOSの試験結果やエントリー理由などで決まる。
※掲載内容は、2024年8月取材時のものです。
創立者長谷川良信氏(※)により、社会福祉学の学び舎として1965年に千葉県中央区大巌町に開学。現在は、千葉・埼玉・東京4つのキャンパスで「実学教育」をテーマに、「総合福祉」「コミュニティ政策」「看護栄養」「経営」「教育」「人文」「地域創生」の7学部13学科を展開する社会福祉系の伝統校。利他共生(他人を思いやり自己の善行による功徳により他者を救済)の精神のもと、さまざまな分野で活躍する共生実践人材の育成が教育方針に掲げられている。
※大正・昭和期の浄土宗の大僧正、教育者、社会事業家(1890年〈明治23年〉10月11日 - 1966年〈昭和41年〉8月4日)。宗教理念にもとづいて実践を行なった三大社会事業家の一人。実践を重視し続ける婦女教育において日本の近代社会福祉の礎を築いた。
[取材ご協力者]
・ 経営学部/学部長・教授|千葉 千枝子さん
・ 経営学部/経営学科長・教授|齊藤 鉄也さん
・ 大学事務局 キャリア教育・支援センター
埼玉キャリア支援室/室長|宮澤 健一郎さん
・ 経営学部/講師|石川恵理子さん、松本英美さん